AOI Meet up Vol.5

AOI フォーラム会員交流会 レポート

written by 水口 みどり

2021.10.08

令和3年9 月2日、プラサヴェルデにて「AOI Meet up Vol.5」が開かれました。AOIフォーラム会員相互の交流からオープンイノベーションのきっかけを提供することを目的とし、22会員が参加しました。
緊急事態宣言下ということもあり、完全オンラインで行われました。コミュニケーションツールには「oVice(オヴィス)」が利用されました。これは、2次元のバーチャル空間で、参加者がアバターで簡単に交流できるものです。DXが社会的に進む中、こうした手法の導入はまさにオープンイノベーションを標ぼうする同フォーラムにふさわしいものでした。

コミュニケーションツール「oVice」

新たな発見次々と―会員によるプレゼンテーション

プログラム前半は会員による5分間のショートプレゼンテーションです。発表者は、自社の事業や技術・資産(シーズ)を紹介、今後進みたい分野や、自社に足りず求めている技術・資産(ニーズ)を発表しました。ジャンルも農業団体、ソフトウエア開発、醸造メーカー、梱包材メーカー、製菓業など多岐にわたりました。
特に、AOIプロジェクトが進めるスマート農業の広まりを受け、生産現場のあらゆる状況をデータ化する環境センサーの開発や、生産から流通までの一気通貫の管理体制システムなど、IT、IoT技術を活用する企業のプレゼンテーションが全体の4分の1を占めたのが印象的でした。
今回は、発表が行われた22会員の中から、業種の違う4会員を紹介します。

伊豆の国農業協同組合

「伊豆の国農業協同組合」からは、主産品であるイチゴ委員会が登壇。同委員会は主に紅ほっぺ、きらぴ香、章姫を生産しています。ハウス作付け面積は28ヘクタールで、そのほとんどが家族経営です。売上は全体で16億円、紅ほっぺが8割を占めています。同委員会は技術水準が非常に高く、親株の生産供給にも力を入れています。一元集荷や検査員による検査、土壌分析、圃場巡回対応、パッケージセンターの整備などを共同で行っており、新規就農者の受け入れから就農までの体制を整えるなど、充実した組織運営をしています。
しかしながら、高齢化に伴う担い手の減少や、技術伝承、品質平準化といった課題もまだまだ多く、省力化、簡素化技術のますますの促進が望まれているとのことでした。

三和酒造株式会社 鈴木孝昌専務取締役

「三和酒造株式会社」は「臥龍梅」でおなじみの酒造メーカーです。清酒製造時に発生する清酒粕の高度活用を模索しています。酒粕は甘酒の原料や食べ物に使いますが、純米大吟醸などの高級酒の酒粕は黒粕が発生してしまいます。品質に問題はありませんが斑点がつくため食用に向いていません。同社はここからアルコール分や香気成分を取り除き、たんぱく質とアルコールを分離することに成功しました。
酒粕は家畜の飼料や農作物の肥料に使われていますが、アルコールや香りが問題でした。そこが解決でき、それらを使った果物や野菜、それを食べさせた家畜のブランド化などが可能になりました。このミルク部分、エキス部分を使いたい企業とのマッチングを希望しています。

富士護謨産業株式会社 森脇善朗様

「富士護謨産業株式会社」は、梱包材メーカーです。取り扱い材料はウレタンフォーム、チップウレタン、エアセルマットなどで、カット加工や打ち抜き加工、粘着加工などを行っています。農業資材も製造しており、代表的なものとしてイチゴ用ウレタン、水耕栽培用ウレタン等があります。他に葉物野菜などに使われている、超吸水ウレタンなども手掛けており、通常より親水性が高いため観葉植物にも利用されています。
課題は、水耕栽培で発生する青藻にウレタンで対応できないかというもの。現在、試行錯誤をしているそうです。ぜひ、ウレタンを使用している農家の方の話を聞きたいとの発言がありました。

株式会社アルガファーム 大田黒敦雄代表取締役

「株式会社アルガファーム」は長泉町にあるソフトウエア開発会社です。主に農業・医療向けのソフトウエアの開発をしています。ラズベリーパイという小さなコンピューターをベースに、CO2センサーを付けたり、画像処理を行うカメラなどを組んだりしています。過去に開催された「AOI Meet Up」で出会った企業と、ブロッコリーのサイズを判定するシステムも開発しました。現在は、キュウリの長さや曲がりを判定したり、トマトの大きさ、色、真円度の判定をしたりするシステムを開発しています。
オーダーメイドが得意なため、低価格で効率化を図りたいという要望があれば声を掛けていただきたいとのことでした。

交流から生まれるオープンイノベーションの”種“

交流会は、ショートプレゼンテーションで興味をもった会員同士の交流が積極的にすすめられ、有益な情報や人を相互に紹介しあう場となりました。oViceの会議室機能を使い、商談を始める人、メールアドレスを交換する人など、バーチャル空間ならではの良さが出た会となりました。中には、サンプルを送り実際にトライアルに入ることが決まった事例も出るなど、熱心な議論が繰り広げられました。
参加者からは、「IT関連、素材メーカーなど、多種多様な参加者の声はとても刺激になった」「農作物の輸送には何度くらいが適しているのか詳しく知りたい」「アグリの革新、採算性の改善、栽培に関心があるので、パートナーの大小でなく、普遍的な課題を知りたい」といった前向きな声が多く聞かれました。
AOI機構の岩城徹雄専務理事兼事務局長は「農業側がIT技術を欲する以上に、IT企業側が技術を農業に導入したいという声が数多く聞けました。普段の、コーディネーターが介入する方法とまた違い、生産現場の声を直接聞きたいという企業ニーズへの答えの一つが今回だったと思います」と本会を振り返りました。最後に、同機構の山田クリス孝介プロデューサーが次回以降の積極的な開催を約して終了しました。

次回は実会場での開催ができることを祈っています。

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