会員相互のシーズ・ニーズを共有するプレゼンテーション
会員によるショートプレゼンテーション
本プログラムのメインは、会員による5分間のショートプレゼンテーションです。各会員の概要、保有する技術・資産(シーズ)、求めている技術・資産(ニーズ)が紹介され、会員相互の理解を深めました。サンプルを持参することも可能で、自社商品紹介や、自社商品の展示等も行われました。また、その後の自由交流では、シーズ・ニーズが合う会員とのマッチングを図りました。
今回の会員交流会では、AOI-PARCに入居している研究機関である「静岡県 農林技術研究所 次世代栽培システム科」、「慶應義塾大学SFC研究所AOI・ラボWetBio分野」、「国立研究開発法人 理化学研究所」、静岡県農林技術研究所加工技術科からも各機関が取り組む研究について発表が行われ、最先端の知見が伺える機会ともなりました。
発表された23会員の中から4会員をご紹介します。
豊田油気株式会社
豊田油気株式会社
「豊田油気株式会社」は、トヨタ自動車をはじめとして部品メーカー等に油圧機器、空圧機器、産業機器等を販売する会社です。
同社は、世界最高峰の真空技術を紹介し、この技術が地球課題を解決すると確信していると語りました。この技術は、アメリカのNASAでアポロ計画に油圧バルブの開発で携わった萩原忠先生によって、その技術を民生に活かすべく開発されました。現在、株式会社インターホールディングスがその特許を有しており、同社は取引先としてこの技術を預かり用途開発・販売を行っています。
この技術には、大型の機械を使わず、プラスチックやシリコンでできた小さなパーツを組み合わせて、手動のポンプで99.5%の真空を作ることができるという特徴があります。
このパーツをフィルム素材の袋につければ、真空パックが出来上がります。
紙パックの入口にこのバルブを内蔵することで、空気に触れずに使い切ることのできる容器になり、既に商品化されたものもあります。この技術により、オリーブオイルで約10か月、酸化が進みませんでした。酸化剤を使用せずに保存できるため、味が変わらず保存が可能です。また、近年問題となっている牛乳廃棄問題も、この技術を使用することで1か月味の変化も菌の増殖もなく保存することが可能です。
その他、電子機器部品等の鉄のパーツが錆びないように真空パックする取組等が行われており、真空パックをすることで、最小体積になるため輸送コストも抑えることができるというメリットもあります。
同社は、開発した試作品を使ってデータ取得に協力いただける企業を求めています。また、需要の拡大に向けた量産体制の確保や、地産地消を目指すために各地域での生産体制づくりを目指しており、商品を一緒に作っていただける企業も求めています。
王子キノクロス株式会社
王子キノクロス株式会社(奥)
サンプルの展示と配布を行った
「王子キノクロス株式会社」は、王子HDグループの中で、パルプエアレイド不織布の製造技術を専門とする会社です。
パルプエアレイドは、柔らかな特有の風合いで空隙(くうげき)が大きく、保水性、通気性が高いことが特徴の不織布で、製品としては家庭用のクッキングペーパーや、食品トレーのドリップを吸収するシートなど様々なところで使用されています。
現在、環境性の高いSDGs製品の開発に力を入れており、農業分野では、プラスチック製品の代替として、保水性が高く、生分解性がある特徴を活かして水耕栽培や土壌栽培の育苗材としての利用を検討中で、生育テストを行っています。
これ以外にもスプラウト栽培で使用する発泡ウレタンの代替や、フルーツの梱包で使用する樹脂材の代替等、様々な農業資材でのプラスチック製品の代替を検討しています。これらの製品は会場にて展示やサンプル配布が行われました。
同社は紙系製品のメーカーのため農業生産に関する知識不足が課題であるとし、農業分野での製品開発に向けて使用用途や求めている素材等のアイデアやアドバイスを求めています。
そして、実際に製品を使って、評価・検討して頂ける生産者、農業資材を開発するパートナーとなる生産者や企業を探しているとのことです。
株式会社平出章商店
株式会社平出章商店
「株式会社平出章商店」は、浜松市で創業74年を迎える製菓・製パンの材料、機械の卸問屋です。
静岡県産のいちごのピューレやクラウンメロンのあんこなど、地元農産物を原料とした製菓材料を開発し、静岡県産のお土産や銘菓を製造販売する菓子屋などに販売しています。また、生産者と菓子屋の間に立ち、両社の要望に沿って必要な加工を行う加工請負も行っています。
同社の課題は、静岡県ではたくさんの農産物が生産されているにも関わらず、加工する場所がないということです。静岡県の農産物を石川や岡山、宮崎など全国の工場に送り、加工したものを静岡県にまた戻すという作業をなくすべく、静岡県内で農産物加工を完結できる仕組み作りを目指しています。
具体的には、まず加工場を近隣に開設すること。次に加工場や、生産者、加工業者、販売者などが共同運用できる冷蔵・冷凍庫の開設です。そして、圃場、加工場、保管場所という小さいエリアを周回する物流を作り、それにあわせて関係者や購買者がモノと情報を交換できるネットワークできる仕組みを静岡県西部で作りたいと語りました。
また、生産者に向けては、規格外で廃棄している生産物でも、業務用加工規格はクリアできる可能性があり、業務用の加工にはニーズがある、ということを広めていきたいとのことです。
バイオマス資源開発合同会社
バイオマス資源開発合同会社
「バイオマス資源開発合同会社」は、2023年7月より、AOI-PARCに入居し、世界的なタンパク質不足を課題として捉え、それに対応する生産を行うことを目的に研究開発に力をいれています。
新たなたんぱく質源を生産する必要がある中で、同社はオオシロアリによって対応できないかと考えています。
同社の取った消費者インタビューによると、今すぐ食べたいとは思わないという回答が非常に多い一方で、飼料として活用するならば食べてみてもいいという回答もあり、将来的には人間の食料、近い将来では飼料としての活用を目指し、大量生産する技術の開発に取り組んでいます。
オオシロアリは、セルロースという物質を炭素源に成長する生物であるため、セルロースを含む廃棄物、副産物の処理で困っている企業を探しているとのことです。廃棄物の処理にお金がかかっていたり、無価値であったりするものを、飼料や食料といった、社会的に価値あるものへ転換することができます。
また、飼料としての開発スピードアップを図るため、バナメイエビやうずらといった体重が軽く、成長が早いことでエサの改良ができるような家畜や養殖魚の飼育・加工についての情報も求めています。
様々なサンプルの配布や展示が行われた
23会員によるプレゼンテーションのあとは、製品サンプルを持参いただいた会員による製品のプレゼンテーションが行われました。また、会場後方には製品の展示や、静岡県農林技術研究所加工技術科による発酵食品の試食等が設置され、多くの会員の興味を惹いていました。
プレゼンテーション後は自由に交流が行われた
その後は、お互いのプレゼンテーションを踏まえて、自社のもつシーズ・ニーズと合った会員と直接コミュニケーションがとることができる交流会が行われました。
中締めの挨拶で、AOI機構代表理事の藤井明から「今日の参加が何らかの参考になったと感じる方は手を挙げてください」と問いかけられると、多くの参加者から手が挙がり、盛況ぶりを伺うことができました。
普段なかなか会えない業種と情報交換できるということで、大いに盛り上がり、AOIフォーラムの更なるオープンイノベーションの進展が期待できる交流会となりました。