相互のシーズ・ニーズを共有するプレゼンテーション
本プログラムのメインは、発表会員による5分間のショートプレゼンテーションです。各会員の事業概要、保有する技術・資産(シーズ)、求めている技術・資産(ニーズ)が紹介され、会員相互の理解を深めました。また、サンプルの配布や製品の展示を通して、自社の技術や商品をPRしました。会員によるショートプレゼンテーションの後は自由交流時間となり、発表を聞いて興味を引かれた会員と交流することで、マッチングを図りました。
参加した会員は農業法人や農業関連分野の企業、大学、研究機関など、様々な分野に及び、互いに交流を深めることで参加者の知見を大きく広げる機会となりました。
今回は、発表された20会員の中から4会員の取り組みと課題についてご紹介します。
紹介した会員とのマッチングを希望される方は、ぜひ担当コーディネーターまでお声がけください。
小林クリエイト株式会社
小林クリエイト株式会社
「小林クリエイト株式会社」は、印刷業を営みつつ、アグリ事業部として富士市で完全閉鎖型の植物工場を運営しています。現在、1日に3,500株、550㎏のレタスを出荷しており、主にレストランやホテル、レジャー施設などに業務用として販売しています。
レタスの生長段階によってLEDの本数や高さを調整することで光の当たり方を最適化するとともに、ファンを付けて光合成を促進するなど、大株化をコンセプトに生産方式の改善に取り組んでいます。
また徹底的な衛生管理を行っており、工場内に捕虫器を設置し、モニタリングし、専門業者のコンサルティングを受けるとともに、3か月に1度の第三者機関による細菌検査などを行っています。こうした取り組みにより、当社のレタスは、日持ちがする、洗わず食べられる、虫の混入がないなどのベネフィットを生み出しています。
同社は工場見学も受け付けており、工場内の様々な工夫を見ることができます。
一方で、レタスのカットの機械化や人手不足が課題となっています。カットしたレタスのニーズが多いものの、カットする人手が足りていないことから、レタスをカットする機械や請負業者などを探しています。
さらに、未利用レタスの有効活用ついてもアイデアを求めています。同社の規定により廃棄処分しているレタスは1日100㎏に上りますが、これらは仕分けをして洗えば食べられるものです。例えば、家畜の飼料などとして役立てることができないか、SDGsの観点からも別の手段を模索しています。
かつまたファーム株式会社
かつまたファーム株式会社
御殿場市の「かつまたファーム株式会社」は、静岡県内で唯一と言える夏秋トマトを育てる技術力の高い農業法人であり、食品製造業者でもあります。
同社では、稲作の課題を根本から解決するため土壌の酸化還元電位をコントロースすることで、籾まきから一度も灌水せず収穫し、稲作の工程を大幅に減らすことに取り組んでいます。作物は、もともと種の時点で収穫時の最大収穫量が遺伝的に決まっており、病気や害虫といった生物的ストレスと猛暑や雨などによる非生物的ストレスで収穫量は減少していきます。生物的ストレスは農薬で抑えることができますが、非生物的ストレスを軽減するため、バイオスティミュラント技術の一つとして酸化還元電位のコントロールが近年注目されています。酸化還元電位を適切にコントロールすることで作物の環境変化に対する抵抗性を高めることができます。
同社はAOIフォーラム会員である株式会社アルガファームと共同で、酸化還元電位のコントロールに不可欠な、土壌の酸化還元電位をモニタリングするシステムを開発しています。
このシステム開発をより良いものとするため、小型金属加工や小型プラスチック加工ができる企業とのマッチングを希望しています。また、酸化還元電位のコントロールに興味のある企業も探しています。
株式会社太陽油化 東京バクテリアラボ
株式会社太陽油化 東京バクテリアラボ
「株式会社太陽油化」は、東京という世界有数の都市で発生する大量の汚泥を浄化する事業を行っています。同社の長年にわたる汚泥処理で培った微生物利用のノウハウをもとに、微生物の力で社会課題の解決に挑むチームが、東京バクテリアラボです。
同社は、汚泥処理の研究から生まれた、有効な微生物を含んだ植物活性剤「TOKYO8(エイト)」を紹介しました。世界中から多くの人が訪れる東京には、人や物資に付着した微生物が、都内の下水インフラを通り、汚泥として同社に自然と集まります。そして汚泥から作られた、「TOKYO8」は世界中の多くの種類の微生物を含んでおり、微生物の多様性が高いため、様々な環境に対応することができ、様々な有機物を早く分解することができます。「TOKYO8」を使用することで、微生物が堆肥や落ち葉などの有機物を分解し、植物に必要な栄養素を継続的に供給します。植物だけに必要な化学成分を供給する化学肥料と違い、「TOKYO8」は微生物の力で土壌の環境と生物多様性を劇的に改善し、圃場の地力を高めることができます。そして、土壌の状態が良くなることで、植物の育ちが変わり、食の安全性や収穫量、甘み、旨み、栄養成分といった品質の劇的な向上にも繋がることが分かっています。
さらに、「TOKYO8」は有機JAS資材評価協議会の「有機農産物のJAS別表等への適合性評価済み資材リスト」に登録されたことにより、有機JAS認証農産物でも使用することが可能となりました。有機物の分解に大変優れているため、遅効性のオーガニック肥料との相性が良く、農薬や化学肥料を使う慣行栽培の効率を落とすことなく、有機農法への移行が可能な点もポイントです。
同社は、資源循環の未来をつくり、地球環境の再生に寄与するという大きな目標を掲げています。「TOKYO8」の散布が、炭素を土壌に固定する手段となりうることが分かってきたことで、同社は地球温暖化対策に貢献できると確信しています。
また海外では、開発途上国で貧困を抱える人々が、わずかな土地で自分たちの食糧を生産するしかないという課題を解決するため、同社は「TOKYO8」を現地生産する仕組みを整えました。化学肥料や農薬の使用量を減らして、農産物の収穫量を引き上げることができる事業を構築し、貧困や飢餓、栄養疾患などの問題を解決することを目標としています。この事業は、現在アフリカとASEANの25ヵ国で受け入れられ、3ヵ国で既にスタートしています。同社は「TOKYO8」を用いた土壌改良や二酸化炭素の削減が世界中で広がっていくことで、SDGsの目標に大きく寄与することができると考えており、志を同じくするハートの熱いパートナーとの出会いを求めています。
オブリック株式会社
オブリック株式会社
「オブリック株式会社」は、富士・富士宮地域でLPガス等の供給を行うエネルギー会社です。2018年には地域電力会社である富士山エナジー株式会社を設立し、総合的にエネルギーを地域に供給しています
富士山エナジーは、朝霧高原で飼育されている牛の排泄物を集め、発酵させることで生じるメタンガスを燃料とするバイオガス発電事業を行っている富士山朝霧バイオマスプラントから、発電した電力を購入し地域に販売することで、再生可能エネルギーの地産地消を実現する役割を担っています。
バイオガス発電では、発電する際に発生する熱が有効活用できていないことが課題となっています。同社では、この廃熱を利用したハウス栽培などの新しいビジネスを立ち上げようと検討しています。今後は、富士山朝霧バイオマスプラントと連携して、環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業を利用して、廃熱を使って何ができるのか調査を行い、ビジネスモデルを構築する予定です。ビジネスモデルが確立できれば、静岡県や地域金融機関と連携して総務省のローカル10,000プロジェクトにより農業用ハウス等を整備して事業を開始することを目指しています。
同社はビジネスを立ち上げるにあたり、ハウス栽培などの農業に対する知見やノウハウを有する協力企業を探しています。
20会員によるプレゼンテーションのあとは、参加者同士が自由に商談・交流いただく交流会が行われました。プレゼンテーションを踏まえたうえで、自社のもつシーズ・ニーズと合った会員と直接コミュニケーションをとることができ、普段は接点のない業種と情報交換できる大変活気に満ちた会員交流会となりました。
また株式会社木村鋳造所が紹介した、発泡スチロールを素材に使った軽トラック用のコンテナボックスなどの各社製品の展示が行われ、多くの会員が関心を寄せていました。
中締めで挨拶に立ったAOI機構の藤井明代表理事は、会員の発表に自然にやさしい事業や、環境負荷の少ない事業展開に関係する内容が多かったことに触れ、「自然にやさしい事業展開、環境負荷の少ない事業展開が、これからますます求められていくと思います。また、そういった新たな工夫に対する価値が世の中でしっかりと認められていく時代に入りつつあります。こうしたことも考えながら、環境負荷の低減、自然にやさしい事業展開とともに、収益性と生産性を同時に追求していくことに力を入れてまいりたいと思いますので、皆様の積極的なご参加を今後ともよろしくお願いいたします」と呼びかけました。