農業の変化を知り、販路の糸口を探る

販路開拓セミナーレポート

written by 大津東子

2022.12.28

2022年11月24日、第10回AOIフォーラムセミナー「AOIフォーラム販路開拓セミナー」が開催されました。今回は総菜メーカー・株式会社ヤマザキの山崎朝彦代表取締役社長と、沼津中央青果株式会社の丹藤松年常務取締役をお招きし、両社の取組を通じて、農業を取り巻く環境の変化や、それに伴う多様な農産物の販路の在り方について講演をいただきました。
講演後は、講演者のお二人に加え、株式会社ヤマザキの山崎海志原料生産技術部取締役部長、株式会社ヤマザキシステムの梶ケ山智明原料チーム部長との商談交流会が行われました。交流会では参加者が積極的に商談する様子が見られ、会員の皆様の販路開拓に大きく寄与した会となりました。

一般財団法人アグリオープンイノベーション機構 細谷勝彦事務局長

挨拶に立った一般財団法人アグリオープンイノベーション機構細谷勝彦事務局長は、「本セミナーは、近年大きく変化している農産物の流通について話題を提供し、ビジネスチャンスにつなげてもらうために企画しました。農産物の流通は2020年6月に市場法が改正されたことで大きく変わりました。さらに、コロナ禍で生鮮農産物の直販ECが拡大し、消費者動向も変化しています。こうした中、生産者はマーケットが求める農産物をいかに生産し利益をあげていくかが問われています。本日は、登壇者のお二人から、それぞれ違うお立場から示唆に富んだお話をいただけると思います。」と本セミナーの狙いを語りました。

講演①「おいしい商品を追求しつづけるために」 

株式会社ヤマザキ 山崎朝彦代表取締役社長

まず、株式会社ヤマザキの山崎朝彦代表取締役社長から「おいしい商品を追求しつづけるために」をテーマに御講演いただきました。

同社は、「家庭料理の豊富なメニューを商品化すること」を企業理念とし、忙しく調理時間がとれない人に向けた「もう一品」の価値を提供しています。目指すのは家庭料理の完全再現ではなく、毎日食卓に取り入れられるシンプルかつ安心できる商品をつくること。それには、素材の良さがカギを握ります。そのため土づくりから栽培、生産まで一貫して取り組んでいます。さらに、製造の過程で出た野菜残渣を堆肥工場で堆肥化し、土壌に戻すという、資源循環にも取り組み、「おいしい商品を届けたい」という願いのもと各工程を改善し続けています。

原料の改善で行った具体的な事例の一つに、男爵イモがあります。男爵イモは繊細な作物のため、各工程の随所に工夫が凝らされています。例えば保管方法は、冬の畑の中ででんぷんを糖化させるというジャガイモの性質を活かし、泥がついたまま倉庫に入れています。また、製造段階ではスチームピーラーの性能を逆手にとり、一番おいしいところとされる皮付近を薄くむくことで、栄養豊かな部分もふんだんに使用することができます。他にもゴボウの事例もお話いただきました。同社はゴボウの栽培に適した中国江蘇省徐州に専用の畑を持っています。現地の土壌に同社独自の堆肥を使い、化学肥料・農薬はできる限り使わないようにしています。

また、同社は自社生産だけではなく他企業からも農産物を仕入れています。

サラダ製造を行うグループ会社「ユニデリ」は、農業法人である株式会社鈴生にロメインレタスや水耕ほうれん草を栽培してもらっています。「サラダに適したこんな野菜がほしい」と求める生産物のイメージをお伝えし、それを鈴生が高い技術で実現しています。また、沼津中央青果には5年ほどほうれん草の調達を依頼。数多い産地とヤマザキをマッチングし、条件が合えば種まきの段階で契約します。

 

今後は、さつまいもの栽培にも取り組んでいきます。さつまいもは現在、九州で流行している基腐病によって生産が厳しい状況が続いています。そこで同社は、グループ企業の農業法人「アグロヤマザキ」を中心に吉田町や掛川市などの生産者に声掛けし、一緒にさつまいもの栽培を計画しています。来年は静岡県内で300トンの生産を目指し、この取組によって県内農家の活性化につながればと考えています。

講演②「販路の『最適化』を目指し、市場、生産者の声を聞く」

沼津中央青果株式会社 丹藤松年常務取締役

続いて沼津中央青果株式会社の丹藤松年常務取締役より、「販路の『最適化』を目指し、市場、生産者の声を聞く」をテーマに御講演いただきました。

沼津中央青果は一貫したコールドチェーンシステムの確立のもと、鮮度の良い農産物を出荷しています。取引先はスーパーが7、8割占める一方で、ECに販路を広げたり、社会貢献の分野で障がい者の方に加工を委託したりするなど幅広い取組をしています。また、当社の取引先は全国にわたります。その中で静岡県内の割合は31%ですが、今後は50%という高い目標をもって取り組んでいきたいと考えています。そのため西部や中部の大型生産者をターゲットに取引を拡大していくとのことでした。

さらに、生産者の視点を持つため、プライベートブランド「いただき」を立ち上げました。西浦みかんの花のはちみつや、社員が栽培したアボカド、健康志向層に向けた黒米などを販売しています。どれも小分けの食べきりサイズで、おいしいと評判です。

同社は地方卸売市場ですが、相対販売100%を目指し、生産者とのつながりを強化しています。新たに圃場面積、収穫物など生産者の情報を収集分析するシステムを導入し、これらの情報を社内で共有、販売価格の安定を図っています。

「仲卸の立場ですが、私たちも現場に足を運んで情報収集し、生産者と一緒に歩むことが大切だと考えます。非常に厳しい情勢の中、一市場として日々努力をしています。生産や出荷など興味があればお声かけください」と丹藤氏は講演を結びました。

登壇者による対談および質疑応答

登壇者による対談・質疑応答

講演後は、休憩をはさみ山崎代表取締役社長、丹藤常務取締役による対談・質疑応答が行われました。

対談では、山崎代表取締役社長から沼津中央青果の集荷拠点の機能について質問したり、丹藤常務取締役が販路拡大のノウハウを披露したりしました。

また、会場からは「生産者から直接買うときも相対になりますか。また、どのように品質を評価しどこまで価格を出すなど決めごとはありますか」や「青果物を一円でも高く売るために生産者に求めることはありますか」など、現場ならではの真剣な質問が飛び交いました。

一般財団法人アグリオープンイノベーション機構 岩城徹雄専務理事

中締めはAOI機構の岩城専務理事の挨拶です。「お二人のお話から共通するのは生産者を大切にするということ。生産者が作った良いものを正しく評価することが大事であると、改めてわかりました。色々な作り方、売り方がありますが、御自身でどのようにメリットを出していくのか考えていく必要があります。また、原材料価格の高騰のしわ寄せが生産者だけに行かないように国全体で生産現場の状況を理解していくことが必要であると同時に、私たち消費者もそういう意識をもって生活していきたいですね」と総括しました。

セミナー後の商談交流会も盛り上がりを見せ、参加者は思い思いに希望する商談相手と情報交換をする様子が見られました。

商談をメインとした交流会は多くの会員が参加し、盛況でした

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