圃場や施設を訪問し、
農業の今を学ぶ

会員視察バスツアーレポート

written by 大津 東子

2023.01.24

2022年12月8日、静岡県西部の農業法人や大学を訪問する会員視察バスツアーが開催されました。バスツアーはAOIフォーラム初の試みで、15会員、19名が参加しました。
訪問先は最先端技術を駆使しブロッコリーを栽培する「株式会社アイファーム」、小松菜をはじめとする多品目を栽培する「株式会社森島農園」、日本初の農林業分野の専門職大学「静岡県立農林環境専門職大学」の3つ。
見学や移動の合間に会員同士が積極的に交流する様子も見られ、短い時間ながら親睦を深められた一日となりました。

① 効果の「数値化」を徹底し、作業効率を向上させる 【株式会社アイファーム】

最初の訪問地は、大規模圃場でブロッコリーを栽培する株式会社アイファームです。同社の会議室で池谷伸二代表取締役から「露地農業での取り組みと今後の目標」についてご講演いただきました。

池谷代表取締役による講演

池谷代表取締役はスマート農業について、作業負荷の軽減や作業効率の向上、コスト削減に加えて、「効果が数値化できること」が大切だと強調します。同社は作業分業制を取り入れ、すべての作業の達成率を集計、管理しています。こうした作業の「見える化」により、責任の所在を明らかにしています。また、効率化の具体的な取組として、ブロッコリーの一斉収穫があります。通常、ブロッコリーは成長のスピードによって収穫時期が株ごとにばらつきますが、花蕾を小さくカットすることで大きさに左右されないカットブロッコリーを商品化しました。収穫を1回で済ますことができ、作業時間を大幅に削減できます。大手取引先からは「欠品しないこと」が求められるため、収穫予測システムの開発や長期貯蔵にも取り組んでいます。

さらに、トラクター作業の講習会を開催したり、ドローンで圃場をモニタリングしたりするなど、技術の向上や作業効率アップのための様々な取り組みもしています。

ドローン飛行を実演

圃場もご案内いただきました。約600か所にのぼるアイファームの圃場は、住宅地と混在しています。

見学中、ドローンで畑の様子を空中から撮影していただきました。風が強い中、ドローンを操作する様子に会員の皆さんからは感嘆の声があがりました。その後、育苗を行うハウスもご案内いただきました。

移動中のバスでは池谷代表取締役に多くの質問が寄せられ、どの質問にも丁寧にお答えいただき、参加者にとってとても有意義な時間になりました。

② 機能性野菜の生産をはじめ、新しいアイデアに取り組み続ける 【株式会社森島農園】

 

続いて訪問したのは株式会社森島農園です。まず野菜を栽培するハウスを見学しました。ここではサラダ小松菜をパレットで、サラダ春菊やサラダクレソンは一つずつパックで栽培していました。

この方法により、病気のまん延防止や、必要な数量だけ出荷することが可能です。。また四角形の木板に必要数の穴を開け、吸引した種をそのままパレットに種まきするなど、森島恵介会長のあふれるアイデアが随所で見受けられました。

病気のまん延防止のため、プラスチックパックに入れて栽培します

高林千晴取締役から森島農園の取組についてご講演をいただきました。同農園はハウス栽培の小松菜を中心に、米やサラダ野菜の栽培、露地野菜など多品目を栽培しています。サラダ野菜は土耕と水耕で栽培しています。露地野菜は、キャベツ、大根、なす、ピーマンなど、季節に合わせた野菜を栽培しています。部門ごとの生産体制を取っていて繁忙期はそれぞれの部門が協力し合って作業をしているそうです。また、機能性表示食品の開発にも取り組み、AOI機構と静岡県産業振興財団、静岡県立大学から支援を受け、サラダ小松菜で機能性表示食品の届出を行い、2022年10月に日本で初めて生鮮食品の小松菜として、消費者庁に受理され「サラダ小松菜NEO 」が誕生しました。さらに米や野菜の価格が低迷する中、農業経営の継続のため、自社生産米のコシヒカリを使用した商品「らくらくごはん(2023年春リニューアル後販売予定)」を 製造・販売しています。らくらくごはんの調理の実演をしていただき、火も電気も使わず、約30分で生米から温かいご飯が炊けました。他にもうるち米でパン粉の代わりとなる米粉を製造するなど、お米の高付加価値化にも取り組んでいます。

「らくらくごはん」の調理を実演

③農林業分野のエキスパートを育成 【静岡県立農林環境専門職大学】

最後は「静岡県立農林環境専門職大学」です。

はじめに鈴木滋彦学長よりご挨拶がありました。「本学は、日本初の農林業の専門職大学として2020年に開校し、2022年の3月に短期大学部の第一期生が卒業しました。4年制の生産環境経営学部では、栽培、林業、畜産の3コースを有し、農林業経営のプロフェッショナルを養成しています養。また、新設の寮や、農耕時代の高床式を彷彿とさせる新設校舎など、学生が通いたくなるような環境づくりにも尽力しています」と同大学の魅力について語りました。

続いて4名の講師よりそれぞれのテーマについてご講演いただきました。60分にわたる講演は幅広いジャンルで、参加者の皆さんは真剣に聞き入っていました。講演内容を凝縮してご紹介します。

1 施設園芸におけるスマート農業  佐藤 展之 教授

現在は、センサーの低価格化が進み、様々なスマート農業技術を安価に施設園芸に導入することが可能となっています。例えば、温室内の環境を確認したり、室内で動くものがあった時にスマホに通知が来たりするシステムが5,000円程度で構築できます。また、光合成の量を常時はかり、スマホで確認できるシステムについても非常に安価で設置が可能になっています。

2 画像・点群データの農林業への利用 星川 健史 講師

ドローンの撮影により森林を面的に計測するシステムについてご紹介がありました。ドローンで写真を撮ることにより3次元で木の形を捉え、一本ずつ自動で木を検出することができます。例えば現在、全国的に松枯れという病気により海岸の松が枯れています。そこで、この病気にかかっている木をドローンのカメラを使って、安価に調査を行う方法を開発しました。さらにAIやディープラーニングの技術により樹の種類が判別できたり、レーザーの照射により対象物の形を把握した後、農薬散布したりするなど、スマート技術を林業に活用しています。

3 農業・農村体験における相互学習 吉村 親 講師

農村に何度も足を運ぶことで食を実体験する「農村体験」は、1990年代後半に食育・食農が流行し政策としても推進された背景があります。農村体験により食を生産段階から学ぶことができて、農村にいないときも、作物を栽培した経験から天候を気にかけるようになるなど、体験が生活の中に紐づけられていきます。また、子供たちの総合的、自主的な体験活動の場として自治体で農業小学校が開設されています。ここでは希望した子供たちが農家の方たちと交流しながら自分の手で野菜を育て、食とのつながりを感じることができます。

4 畜産農場が儲かる研究・技術開発とは? 大塚 誠 准教授

豚肉のランクは重量、背脂肪が基準として判別されます。この2つを測るには、豚の毛を刈りジェルを塗って超音波測定を行いますが、手間がかかるため多くの畜産家は長年の勘で判断します。そこで、より簡単に豚のランクを判別できる方法を研究しています。また、安心、安全で、おいしい豚肉を調べる方法も研究しています。微電流を流し脂肪量を計測する「インピーダンス法」をより有効的に活用するため、魚の鮮度測定器の機能を取り入れたシステムの製品化を目指しています。

 

今回のバスツアーは、大規模経営や多品目栽培、学術機関を巡り、様々な観点から農業を見て学ぶことができる機会となりました。

帰りのバス内で、一般財団法人アグリオープンイノベーション機構の岩城徹雄専務理事は「今回の視察から、従業員を大切にしているところは良質でいいものを作っているのだと改めて学びました。アイファームではデータを重視する新しい農業の姿を、森島農園では機能性表示食品として野菜の生産など常に新しいことに取り組む姿勢を拝見しました。農業にかかわらず、私たちも次の世代に向けて従業員を大切にすることが大切だと考えます。今回のバスツアーを通じて広がったネットワークを次のステップにつなげてください」と総括しました。

 

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