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【コンソーシアム事例 次世代高品質種子と高機能ケールの安定生産事業】

written by AGRI JOURNAL編集部

2018.03.14

静岡県が取り組む「AOIプロジェクト」では、オープンイノベーションで取り組む民間事業者のビジネス展開を支援する事業が4件採択されました。本事業では、農業関連分野の事業化のほか、生産性の高い農産物を活かした食品や健康等の産業分野における事業化の促進を図ることを目的としています。
今回は、採択されたコンソーシアムの一つである「次世代高品質種子と高機能ケールの安定生産事業」の取り組みについて、代表機関である株式会社増田採種場の増田秀美さん、静岡県農林技術研究所の山本寛人さん、AOI機構コーディネーターの加藤公彦さんに、お話を伺いました。

経営課題解決に向けた他産業との連携

―――「次世代高品質種子と高機能ケールの安定生産事業」を行うにあたり、株式会社増田採種場と、株式会社ケーイーコーポレーションのコンソーシアムが立ち上がりました。この事業の目的や概要を教えてください。

株式会社増田採種場 増田秀美氏

増田:増田採種場は、ケールやプチヴェール、キャベツなどアブラナ科野菜の品種開発に挑んできました。生産者、消費者の立場に立って、新しい品種の育成を行っています。

そして今、植物工場ビジネスなど次世代農業の新規参入が急増するに伴い、より一層、種子に高い発芽率と無菌化が求められはじめました。

私たちの事業では、種子の高品質化を実現することで、明確な育成基準値内での高い発芽率を保証し、農業の産業化を目指します。また、ケールの生産性と内容品質を両立する栽培技術および病害虫防除技術を開発し、マニュアル化します。この生産技術と高品質種子をセット販売することによって、生食用高機能ケールの生産拡大を図ります。

 

―――事業を進めるにあたって、もとより何か課題を抱えていたのですか。

増田:ケールはビタミン、ミネラル、カルシウムなどの栄養素が豊富に含まれ、大変栄養価の高い野菜です。しかしながら、独特の苦味や固さから、家庭の食卓にあまり馴染みがないのが現状です。そこで、苦味の少ないソフトケールや、ジューシーケールを開発してきました。ほうれん草のように、サラダや炒め物として気軽に食べることができます。これらをもっと多くの人に日常的に食してもらうことで、健康寿命に貢献したいと考えています。そのためには、生産の安定性を保ち、ビジネス展開を目的とした生産のマニュアル化する必要がありました。マニュアル化することで、多くの農業者と共に生産体制を整えることができます。

 

―――その問題点を解決するためにコンソーシアムが立ち上がったということですね。どのようにマッチングが行われたのですか。

 

加藤:増田採種場さんには、以前よりAOIフォーラムに参加していただいていました。その中で、私たちAOI機構に相談を持ちかけられたという経緯があります。経営課題と目的が大変明確であったため、スムーズにマッチングの可能性がある企業をご紹介することができました。

 

増田:ご紹介いただいた株式会社ケーイーコーポレーションさんは、圧力容器および熱交換器を製造する会社でした。経営課題を伝えると、私たちにはない技術力とスピード感で問題解決の手段を提案してくれました。他業種とつながることで、これまでにない大きな可能性が見えてきました。

役割分担の明確化が事業成功のカギ

―――どのような役割で事業を展開していく予定ですか。

 

増田:ケーイーコーポレーションさんでは種子の高品質化技術の開発を行います。増田採種場では種子の品質保証検定ラインを設置し、それらを合わせ高付加価値な種子の生産を行います。また、生産性と内容品質を両立するケール栽培技術を開発するため、農林技術研究所に病害虫防除マニュアルと栽培技術の研究を委託しています。

静岡県農林技術研究所 山本寛人氏

山本:今後、栽培規模の拡大を目指すために病害虫防除マニュアルは必須です。また、機能性成分量を維持、増加させながらも安定した収量を確保することはビジネスにおいて重要です。そのため、農林技術研究所では、発生する病害虫を把握し防除方法を明らかにすることや、光合成を最大限に発揮させるための資材選定、栽培技術開発なども進めます。

 

増田:これらを活用し、高機能ケールの種子とその生産マニュアルをセットにして販売をしていく予定です。また事業計画が順調に推移しているかは、AOI機構コーディネーターの加藤さんに定期的なチェックにご協力をいただいています。

AOI機構 コーディネーター 加藤公彦氏

加藤:ここまで、非常にうまく事業マッチングが行われているように思います。コーディネーターとして、今後は事業化に向けた販路開拓の支援に力を入れていきたいと考えています。

 

―――マーケットのイメージはありますか。

 

増田:海外のマーケットも視野に入れています。これらの事業を推進することで、育成基準値内における発芽率を保証することが可能となります。明確な保証体制を整えた高品質種子に知財を掛け合わせることで、ライセンス生産によるグローバル展開を目指します。

 

加藤:増田さんはビジネスに対して、とても建設的な考えをお持ちです。この研究開発が進めば、世の中に貢献するビジネスに成長していくと感じています。

 

増田:ケールが人々の健康寿命に寄与することは間違いありません。美味しく食べてもらいながら、健康にも貢献できるビジネスが展開できることは大きな喜びです。

今後はさらに、増田採種場だからこそできる商品としての価値を高めていきたいと思います。

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