共感を深め、次なるアクションを見つける
先端技術を農業分野に応用し、静岡から「世界の人々の健康寿命の延伸と幸せの増深」に貢献するAOIプロジェクトの中心的役割を担うAOIフォーラム。2017年4月に設立し、現在は35業種・143会員で構成されています(2018年9月7日現在)。
普段はあまり接点を持つことのない会員同士の交流を作り出し、お互いの事業や個人の思いを知ることによって、この先も協力し合える関係を築き、新たなビジネスにつなげてほしいとの考えから、今回の開催に至りました。
初の試みとなる交流会に向けて、AOI機構は2つのポイントを設定しました。ひとつは、「個人」をベースに思いをつなぐこと。ビジネスマッチングは個人と個人による思いのマッチングが重要になります。企業単位のビジョンの共有ではなく、個人を見つめ共感できる場づくりを目指しました。
もうひとつは、かき混ぜて「気づき」を生むこと。イノベーションは多様な価値観や知識、創造性が混ざり合う場所から生まれます。多様な分野の多様な人たちが集まるAOIフォーラムの強みを同じ空間でかき混ぜることで、新たな「気づき」を生み、次なるアクションへの種を生み出したいと考えました。
当日のプログラム
16:30~ | オープニング |
16:35~ | AOIフォーラム活動紹介 |
16:45~ | 参加者自己紹介 |
17:20~ | ケータリング |
17:30~ | テーマトーク |
18:20~ | フリートーク |
18:50~ | クロージング |
AOIフォーラムの課題と今後の取り組み
はじめに岩城徹雄専務理事兼事務局長は、「いろいろな意見を交わすことで何かの気付きを発見し、それを新しいアイデアにつなげてほしい」とあいさつ。
続いて吉田新吾プロデューサーが、AOI機構の活動について説明。「現在はプロジェクトの目的に向けた個別プロジェクトの立案と、県や研究機関と一緒に新たなプロジェクトを進める取り組みを行っている」と話す一方で、「農業におけるニーズは対象者・対象物・作業内容などによってさまざまなので、本当のニーズを特定することが難しい」と意見を伝えます。そのうえで、「会員のみなさんが直接顔を合わせることで、本当に必要な技術やサービスを浮かび上がらせ、新たなチャレンジのきっかけにしたい」と今回のイベントに向けての期待感を述べました。
共通点を探し個人の思いに触れる
前半のプログラムでは「自己紹介」を実施。3人1組になって「全員の共通点」を見つけてもらいました。
序盤の緊張感が漂う空気は一転。少しずつ笑顔や笑い声が増え、会場は明るい雰囲気になっていきます。
一通り済んだところで、各チームの共通点を参加者全員で共有します。「ビールが好き」「静岡県出身」などのパーソナルなものから、「食に関することに携わっている」「AOIフォーラムがきっかけで、農業に参画するようになった」など、仕事関連ものまで多岐に渡りました。共通点を見つけることによって、お互いの「個」を知る時間となりました。
食でコミュニケーションを図る
会場が温まったところで、ケータリングを楽しみました。会員に提供していただいたレタスや蕎麦の芽、緑茶ごはん、にんじんペーストなどをメインとした全10品を、三島市にあるイタリアン・ROSATOさんが用意。おいしい料理で会話も弾みつつ、食を通してさらにお互いを知るきっかけとなりました。
(左上)三島ニンジンのスフォルマートとリンゴのサラダ(右上)蕎麦の芽と生ハムのトルティーヤ(左下)お茶風味のバーニャ・フレッダ (右下)三島ニンジンのパンナコッタ
あらゆる視点をかき混ぜ、気づきを生み出す
後半は3チームに分かれ、農業を取り巻く課題をテーマにディスカッションを実施。ここでは「メモ」「発見」「アイデア」で構成されたアイデアシートを使用しました。参加者は議論を交わしながら初めて知った内容をシートの「発見」部分に書き込み、特に重要だと感じたキーワードを浮かび上がらせます。そのキーワードと自社の視点を掛け合わせることによって、課題解決に向けた新しい「アイデア」を導きだしました。
アイデアシート
今回のテーマは以下の通り。
「IoTと農業をどう掛け合わせる?」
「温暖化や地球環境とどう向き合う?」
「人材不足とどう向き合うか?」
ひとつのチームは「地球温暖化」に注目。水耕栽培で業務用の小ネギを生産する株式会社焼津冷凍課長・潮田政和さんは「ビニールハウス内の気温がさらに上昇すると作物にダメージを与えてしまう」と自社の課題を伝えると、理化学研究所の齋藤洋太郎さんは「光合成に必要な可視光を遮断せず熱を伝える赤外線だけカットすればハウス内の温度上昇を抑えられる」「冬は逆に赤外線でハウス内を暖める必要がある」「住宅の窓みたいにハウスのフィルムやガラスを2重、3重にすることで断熱性を高められないか」と提案。それにより冷房のコストが軽減されるのでは、とチーム内で話が膨らみます。
続けて、養豚の生産・販売業務を行う株式会社春野コーポレーションの代表取締役・鳥居英剛さんは、種豚の改良と育種も行うことから「暑さを逆手に取った夏に強い作物の品種改良は可能か」と問いかけます。それに対して静岡県農林技術研究所の上席研究員・貫井秀樹さんは「高温対策としては、これまで主にミストやヒートポンプの利用など、施設を冷やす技術について研究してきた」としながらも「環境制御だけでなく、環境変化に対応できる品種改良も重要。高温下での選抜により夏に強い品種の育成は可能」と見解を述べるなど、各分野の視点から課題解決に向けてのアイデアが数多く飛び出しました。
他にも、「現場に合わせてIoTサービスを提供するのではなく、IoTを用いやすいデザインに現場を整備していくことが重要ではないか」、「IT化によって若者が興味を持ち、農業に取り組む意欲が増えるのでは」などの意見も飛び出し、さまざまな業界の意見交換によって、個人では思いつかない気付きや発見が生まれました。
AOI機構は課題を乗り越えられる力がある
イベントを終え、IoT全般の研究開発を行う株式会社イージステクノロジーズ代表取締役CEOの茅野修平さんは、「IoTと農業の関係はまだまだ薄いと実感した。まずは農業の情報を集め、それをどれだけ多くの人に使ってもらえるかを整理できれば、農業はまだまだ発展できると思う」とコメント。
また、一般鋼材の販売、一般鋼材の切断及び曲加工販売する近藤鋼材株式会社総務部長の佐野文理さんは「さまざまな業界の人とお互いの強みやアイデアを共有することによって、いろいろな切り口を見つけることができた」と話し、「AOIフォーラムはいろいろな課題を乗り越えられる力があると感じた」と、今後の取り組みに、さらなる期待を寄せていました。
近藤鋼材株式会社 佐野文理さん
AOIフォーラムで未来の発展につながる“発見の芽”を
交流会で、さまざまな業種のさまざまな個性に触れた会員たち。普段は触れることのないアイデアや気づきを得ることによって、AOIフォーラムの取り組みに大きな可能性を感じたのではないでしょうか。
今後もAOIフォーラムでは交流イベントを計画していきます。「もっとAOIフォーラムを活用したい」、「会員の意見を聞いてみたい」と考える会員のみなさんは、ぜひ参加をご検討ください。きっと、未来の発展につながる“発見の芽”を見つけることができるはずです。