2年目のAOIフォーラムの活動を加速させる新コーディネーター

【AOI機構コーディネーター 上原寿茂さんインタビュー】

written by AOI機構

2018.05.23

AOIフォーラムの活動も2年目を迎え、産・学・官・金の多様なメンバーが集まっています。AOI機構では、会員の皆様のコラボレーションによる研究開発やビジネス推進の活動を、より具体的にすべく活動を加速化しています。
本日は、会員の皆様の活動をさらに強力にサポートするべく、5月からコーディネーターとして新たに採用された上原寿茂(かんばら ひさしげ)さんにお話をお伺いしました。

会社人生35年で3つの異なる領域の事業を立ち上げに関与

上原コーディネーター

―――まずは御経歴をお聞かせください。

 

上原:化学系の民間企業で35年間働いていました。元々大学でのバックグラウンドは化学なのですが、業務では化学そのものの研究というより、社内のシーズ技術をアレンジしながら新製品、新規事業を作ることに力を注いできました。

私が取り組んだプロセスは、すでにある社内の技術をアレンジし発展する研究開発と、そこで生まれたものを、新しい市場に投入するためにはそのままでは使えないことが多いものですから、それをアレンジして製品化するための研究開発を行って来ました。

 

―――これまでの御経験の中で製品化に携わって来たものはどのようなものでしょうか?

 

上原:私は35年の間、10年ずつくらいの単位で別の内容の事業化を担当してきました。最初は、機能性フィルム、そして次は薄型テレビ材料、最後はがんの診断技術の事業化を担当しました。

 

―――それぞれマーケットも技術領域も全然違う分野ですね。全く違う分野のテーマはどのように見つけられたのでしょうか?

 

上原:先に社内にある技術シーズありきではなく、自分がやりたい分野をマーケティングの中から見つけてきて、それに使える社内の技術をマッチングさせるということを行います。また新しい領域に関する取り組みのため、普通は社内の技術だけではできないことが多いので、大学などの技術を調べ加えながらその用途にマッチングさせます。時には海外の著名な大学と連携を行ったこともありました。

がんの診断技術を受け持った時は、全くの素人でしたが、お医者さんと同じ土俵で議論できないことには仕事にならないと感じ、一生懸命勉強しました。特にがん関係の論文は数多く読み込み、自分でもよく勉強したなと思います(笑)。業務のために必要な勉強は厭わないので、農業もこれから一生懸命勉強します。

共同研究における知財のあり方

―――農業分野において知財が重要なテーマです。AOIフォーラムの中でも取り組みを行おうと思っているのですが、これまで上原さんは知財においてどのような活動をされて来ましたか?

 

上原:私の経験上、大学の先生は論文にはこだわるが、知財にはあまりこだわらない人が多いと感じています。逆にそういう状況ではいけないということで、プロジェクトがある程度進んだ段階で大学側が特許庁なんかから特許の専門家を呼んでTLOに入れる。すると途端に知財のことを言い出して、知財を共同出願して大学側にロイヤリティが入るようにしないと共同研究をやらないと言い出します。

両極端ですが、私はどちらもよくないと思います。知財にこだわらないのは企業にとってラッキーなことかもしれないけれど、それではいい関係が長続きしないと思います。アイデアを出して、それを具体化した人が発明者、出願人に入るべきです。すると騙し合いがない。

この発明は誰がしたかという原点に返れば、誰を入れるかというのはすんなりと決まる話ですので、それを企業が勝手に大学を排除したりしてはいけないと思うんです。

発明者は名前を入れるし、そうでない人は入れない。そうやると意外にうまくいくんですよ。自分たちだけで独占しようという気持ちを持ってはいけない。正直にやる、事実に基づいてやるということを心掛けてやってきました。

農業にサイエンスの視点を入れ、新たな事業を創り出す

上原コーディネーター

―――AOIフォーラムの会員さんには様々な業種の方がいらっしゃいますが、コーディネーターとして、どのようなサポートをしていきたいと考えていますか?

 

上原: 私自身農業経験は0ですので、会員の皆様にはとてもかないませんので大いに勉強させていただこうと思っています。一般的な感想ではありますが、これからの農業はサイエンスのメスが入らないとなかなか発展しないと思っています。

それがバイオロジー(生物学)なのか、ケミストリー(化学)なのかはわからないですが、サイエンティフィックな視点を入れていけばまだまだ伸び代があると思います。プラスアルファの要素が必要な部分、つまり新しい技術を取り入れていかなければ、世界とは戦えないと思っています。その点につきましては、これまでの経験が生かせるのではと考えています。

また、静岡県でも実施されているAI農業には、農業に積極的にサイエンスの視点を取り入れるという点で非常に興味があります。今後勉強して、会員のみなさんにフィードバックできればと考えています。

AOIフォーラムでの夢

―――まだコーディネーターとして仕事を始められたばかりではありますが、AOI機構のコーディネーターとして何か今後の夢や目標はありますか?

 

上原:具体的に言えるレベルにないのですが、私が喜びを感じるのは、商品なのかシステムなのか、あるいは別の物なのか、とにかく今までにないものを作り出していくことです。それらを会員の皆さんと一緒に作り出していくのが私の夢です。

実は私は、今走っているものを大きくするとか、維持するといった仕事はこれまでの会社人生ではほとんどやったことがないんです。30代半ばで、1年間だけそのような仕事でやったことがあるのですが、楽しくなかったです。私には合わないなと(笑)。ですから、どんどん新しいことに取り組んで、新しいものを産み出していきたいと考えています。

 

―――始まったばかりのAOIフォーラムの活動にぴったりな性格をお持ちですね! 上原さんに相談したいことがあれば、どのようなことでも構いませんのでぜひ御連絡ください。

上原 寿茂

AOI機構 コーディネーター

1982年 京都大学工学部卒業。1982年 日立化成株式会社入社。主に研究所にて新製品、新事業の創出に従事。2017年日立化成株式会社退社。2018年より、AOI機構でコーディネーター。

専門分野は、高分子化学、材料科学、研究開発成果の事業移転、特許出願・活用戦略。

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