開発者の興味・関心と消費者のそれは、同じではない
株式会社イワサキ経営 駿河増販情報センター 宮口巧氏
「研究成果を売上に直結させるためにまず必要なのは、自分たちの研究成果をしっかりと把握することです」と話しはじめた今回の講師・宮口巧氏。
研究者が興味を持つ部分と、消費者が関心を抱く部分は必ずしも一致してはおらず、食い違っている場合がほとんどなのだそう。
その一例として、宮口氏は「テレビのリモコン」に例えて説明してくれました。
テレビのリモコンには、たくさんのボタンがついています。ですが、そのすべてのボタンの機能を余すところなく把握して使いこなしているという人は、いったいどれほどいるでしょうか?
この「テレビのリモコン」に無数についている「たくさんのボタン」が、研究者のこだわりを表しているのです。
どれだけたくさんのボタンがついていても、普段使用するのはせいぜい全体の2割ほど。それと同じように、研究者のこだわりに対しても、消費者は関心を寄せてはくれません。
それでは、どのようにして消費者にも興味を持ってもらうきっかけをつくればいいのでしょうか?
宮口氏は、「研究を開始または途中まで進んだ時点で、臨める成果や応用可能性について想定しておくことが大事です」と言います。
実際に研究成果にたどり着く前に、こんなことに応用できそうだと想像しておくことが大切なのだそう。消費者は、その想定された結果=価値として認識し、そこにお金を投じてくれるのです。
自分たちのシーズ・ニーズを要約できますか?
自分たちの研究が、どのような成果に結びつき、具体的な商品やサービスとして帰結していくのか。その点をしっかりと把握した次に考えなければならないのは、「せっかくの商品・サービスを受け入れてくれる市場はどこにあるのか?」というところです。
宮口氏は、「シーズ・ニーズ」という言葉を使って説明してくれました。
自分たちの研究には、競合他社のものと比べてどんな優位点があるのか。類似したものがすでに出回っていないかどうかも含め、しっかりと幅広くリサーチし認識した上で探っていくのがシーズです。
シーズをはっきり定めた上でニーズを絞り込んでいきます。
調査を重ね、定めた優位点に対して、「この研究のこの部分であれば、こういう市場には受け入れられるだろう」「成果を上げるだろう」とニーズを仮定していくのです。
優位点を列挙した後に、市場可能性を探索するという順で進めていきます。
こういった調査は、「ブレインストーミング」とも呼ばれ、「使えるか使えないかはさておきどんどんアイデアを出していくのがコツだ」と宮口氏。
いわば、アイデアを次々と発散させていくイメージで、具体的な判断は“後でまとめてやる”と割り切って進めていくのがいいのだそう。
この過程を辿っていけば、自然とシーズ・ニーズが絞り込まれていき、専門知識のない一般の方に対してもわかりやすく魅力をプレゼンできるようになります。
コンセプトとターゲットを合致させるのが、売上に繋げる道
研究者と消費者の興味・関心をもつ点は異なっていること。
それを踏まえた上で、自分たちがやっている研究のシーズとニーズを探ること。
丁寧に手順をなぞっていけば、せっかくの研究成果が水の泡になってしまうことはありません。次のステップは、「コンセプトとターゲットを合致させること」です。
コンセプトとは、開発した技術やアイデアの切り口、差別化のポイントそのもののこと。
対してターゲットとは、いわば消費者のこと。
消費者は、ここでいう研究成果そのものが欲しいわけではなく、あくまでもその成果や技術がもたらす価値(ベネフィット)を求めているのです。
このコンセプトとターゲットを合致させれば、研究成果を売上に繋げることができます。
宮口氏が例に挙げられたのは、「お店で電動ドリルを購入した人」。
果たしてこの人は、電動ドリルそのものが欲しかったのでしょうか?
電動ドリルのコレクターでもない限り、そのものを欲しがるケースは限りなく少ないでしょう。ほとんどが、電動ドリルで何かをしたいから購入する場合が大半です。
このように、商品そのものではなく、その商品がもたらす価値=ベネフィットを欲しがるのが消費者というもの。
それを踏まえた上で、コンセプトとターゲットの合致を実施すべきなのです。
販路を開拓する鍵は「展示会」
- 研究者と消費者の興味・関心ポイントが違うことを知る
- 自分たちの研究のシーズとニーズを探る
- コンセプトとターゲットを合致させる
ここまできたら、あとは販路を開拓する取り組みをしていきます。研究成果を売上に繋げるために必要なのは、しっかりと戦略を練って臨む「展示会」です。
ターゲットが多く来場する展示会を見極め、商品やサービスの魅力をわかりやすくプレゼンすることが、具体的な売上に繋がる一歩となります。そのためには、展示会後の手厚いフォローも大切だと教えてくださいました。
研究・技術開発は、より良い未来のため、よりブラッシュアップされた商品やサービスを世に生み出していくために、必要不可欠なものです。
キャッシュを生むためにはかなりの時間がかかってしまいますが、ここ日本だけではなく世界中に向けて、皆さんの研究成果が効果的であることを願っています。そんな宮口氏のエールにて、会は閉じられました。