共創によるビジネス・イノベーションで未来をつくる

【AOI機構コーディネーター 内藤正英さん・加藤公彦さんインタビュー】

written by AGRI JOURNAL編集部

2018.01.15

AOIフォーラムには、産・学・官・金の多様なメンバーが続々と集まりはじめています。今後、フォーラム参加者の共創によるビジネス案件の創出は、ますます期待されていくことでしょう。
本日は、ビジネスの立ち上げに必要なパートナーの紹介や、事業計画、研究計画立案のアドバイスなどをサポートしてくれるAOI機構コーディネーター/中小企業診断士 内藤正英さんと、博士(農学)加藤公彦さんのお二人にお話をお伺いしました。

専門分野を活かし、充実のサポート体制を実現

AOI機構コーディネーター/中小企業診断士 内藤正英さん

―――まずはお二人のご経歴をお聞かせください。

 

内藤:これまで静岡銀行にて融資渉外や法人企画業務を、グループ会社等への出向時には経営コンサルティング・事業継承・M&Aに従事するほか、ベンチャー投資・農業ファンド業務なども行ってきました。現場で培ったコンサルティング能力に加え中小企業診断士の資格も取得し、常に「出口」を意識したソリューション営業を実践してきました。

例えば、2013年には農林漁業ファンドの担当者として県内30社以上の農林漁業者と面談、ニーズを聴取し「富士の国乳業(株)」へ出資。またオリーブ栽培の「(株)CREA FARM」等のベンチャー企業への投資実行をするとともに、成長支援のための販路開拓や社内体制整備を行いました。現在も引き続き、特許事務所と連携した技術開発を含めた戦略展開についてもコーディネートを実施中です。

 

加藤:私は静岡県職員として、主に農林技術研究所で研究開発に従事してきました。これまで植物病理学、植物生理学を中心に、遺伝子組み換え研究や、イチゴの高床式養液栽培システムの開発なども行ってきました。また、メロンの黄化えそ病を世界で初めて発見し「Melon yellow spot virus」と命名、トマトの黄化葉巻病・キクのえそ病の3種のウイルス病に関してまとめた私の博士論文は、多くの研究者に関心を持っていただきました。 また大学や企業との共同研究を行うことで、研究コーディネートに関する経験を積むとともに、研究員の育成・農学博士取得の支援などにも携わってきました。

 

―――全く異なるフィールドでご活躍をされてきたお二人ですが、コーディネーターとして、どのようなサポートをしていただけるのでしょうか。

AOI機構コーディネーター/博士(農学)加藤公彦さん

加藤:私は、研究支援をメインにサポートさせていただきます。これまで幅広い研究をしてきた知識を生かし、研究者としてアドバイスをすることができると考えています。特に規模の小さいスタートアップ企業の場合は、知識の幅が広がりにくく、解決策が狭くなりがちです。

例えば、「イチゴの収穫量をアップさせたい」と考えているとします。収穫初期に一気に収穫量を得るのと、中期に向けて徐々に増やしていくのでは、年間収穫量に大きな差が出ます。このとき、植物の生理現象をどれだけ理解しているかは、とても重要なことです。経験と勘で栽培をするのではなく、知識さえあれば、理想の栽培環境に近づくことが可能となります。

本人がまだ気づいていない“内在する問題点”にアプローチし、解決に向けた手段を提供することが私の役割です。

 

内藤:私は、主にAOIフォーラムに参画する事業主体間のビジネスマッチングのコーディネートをさせていただきます。先ほど、加藤さんからは小規模組織に起こりがちな問題点についてお話がありました。一方、大規模になると自分たちの組織だけで解決できるため、外部交流が閉じてしまうことがあります。

ビジネスは常に“出口”つまり“売上”を意識した戦略が必要です。販売先となるお客さまのニーズを把握し、今すべき課題を見つけ出すことが大切です。これまでに、成功事例だけでなく、失敗事例も多く把握していることは強みでもあります。

企業の成長ステージに応じた経営課題の解決に、スピード感を持って取り組みます。

現場を知るコーディネーターが築く研究機関の連携

―――実際に何か取り組まれている事例などはありますか。

 

内藤:先にお話しに挙がったオリーブ栽培の「(株)CREA FARM」は、AOIフォーラムの連携事業者でもあります。同社では、オリーブオイルを絞った後の残渣が問題となっていました。そこで、まずは経営課題を整理し、出口を意識した戦略を立てるべく、ターゲット・開発商品などを絞り込んで企画立案を行いました。開発商品が化粧品やサプリメントに決まると、次に必要なのは資金調達と企業マッチングです。私が、最も得意とする分野です。

 

加藤:サプリメントなどの商品開発には、残渣の成分研究が課題となりました。また、その加工方法も研究する必要がありました。そのため、それらに一緒に取り組んでくれる研究所を探し紹介するほか、コンソーシアムを構築するための地盤づくりなども行なっています。

 

―――入居事業者である理化学研究所や慶應義塾大学SFC研究所 AOI・ラボとの研究促進にも取り組んでいると伺いました。

 

加藤:AOI-PARCには、最先端の次世代栽培実験装置が装備されています。それらを最適化し、企業のメリットになるよう支援を行なっています。理研や慶應にとどまらず、より多くの研究員を巻き込んでいく予定です。これまで、研究者として多くの大学や研究機関と深い繋がりを形成してきました。今後も大学や研究機関とコラボレーションしていくことで、コンソーシアムがうまく機能していくと考えます。少しずつ実績を積み上げながら、共に次の可能性を見出せる協力体制を作り上げたいと思います。

 

―――地元の自治体との協力体制などはありますか。

 

内藤:私自身が現場主義であることに加え、前職で農林漁業ファンドの担当者をしていたことも手伝って、情報データとしてだけでなく、多くの農林漁業者や自治体などと幅広い関係性を築いています。そのため、テーマや対象によってアプローチ方法を変え、協力を得ることのできる基礎地盤が整っています。

地域との関係性づくりの方法としては、ファンをつくりながら資金調達を行うクラウドファンディングにも注視しています。既に、私たちが支援をさせていただいた成功事例も上がっています。クラウドファンディングでは、プロジェクトページやストーリーの作り込みによって、投資を募るだけでなくファンを増やすことも可能です。また、地域資源の活用により観光化が促進されれば、AOI-PARCに注目する人が増えるかもしれません。

 

―――大学や研究機関、地域、市民と多くの人を巻き込みながら生まれるイノベーションに期待が高まりますね。今後の目標や夢などはありますか?

内藤:AOIフォーラムには、最先端の設備に加え、最先端の技術が集まりはじめています。参画した会員の皆さまが安定した実装作業が行えるよう、仕組みづくりに力を入れていきます。また、金融出身者が支援するクラウドファンディングには大きな可能性も感じています。研究施設としてだけでなく、“出口”の支援をすることで地域経済の発展に貢献していきたいと思います。

 

加藤:小規模の農業従事者を、どのように支援していけるかは大きな課題です。目に見えない付加価値を、見える形で表現するには、科学的な根拠を要します。例えば有機農法で食味が良い野菜を、科学的な根拠に基づき機能性を謳うことで、サプリメントに頼らない新しい野菜の価値として提供することができるかもしれません。そのようなプロジェクトを、地域の小規模農家を巻き込みコンソーシアムを形成し実現できたら嬉しいです。

内藤 正英

AOI機構 コーディネーター

1981年 同志社大学商学部卒業。1981年(株)静岡銀行入社。県内外にて融資渉外に従事。2013年 静岡キャピタル(株)入社。2017年 静岡キャピタル(株)退職。2017年より、AOI機構でコーディネーター。

専門分野は、産学連携、研究開発、知財、販路開拓、資金調達。

加藤 公彦

AOI機構 コーディネーター

1980年 京都大学工学部工業化学科卒業。1980年 静岡県庁入庁。主に農林技術研究所で研究開発に従事。2001年 東京大学大学院農学生命科学研究科より博士(農学)取得。2017年 静岡県庁退職。2017年より、AOI機構でコーディネーター。

専門分野は、植物病理学、植物生理学であり、AOI機構では、コーディネーターとして、オープンイノベーションの推進や研究成果の社会実装に関し、幅広く企業の支援を行う。

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