ビジネスマッチングにおける大きなポイント
AOIフォーラムでは「世界の人々の健康寿命の延伸と幸せの増進」に貢献するためさまざまな活動を行っています。そのため、コラボレーションによる研究開発の立ち上げや、ビジネスの促進を目指し支援しています。農業分野だけでなく多面的な視点を持つことで、いま抱えている農業における問題の解決策や、これまでになかった新たな発想が生まれていくことを望みます。
AOIフォーラムでは、入居者企業やコア研究機関、研究者、自治体まで、農林水産業のイノベーションに関わることであれば、すべての範囲でコーディネートが可能です。例えば、ビジネスマッチングによる、商品開発・流通経路相談。経営関連における、資金調達・商標などの知財相談。情報提供としての、研究事例・ICT関連システムなど、AOI機構コーディネーターがサポートします。
まず、ビジネスマッチングに向けて大切なことは、作物や農場の魅力をアピールすることです。それには、大きく4つのポイントがあります。
- どのように作物が使われるのか、誰が食べてくれるのかを想像する
- 他には負けない、勝てるポイントを考える(味、色、かたち、そのほか)
- こだわりや愛情が伝わる、商品名をつける
- 誰にでも説明できるよう、紙に記すなどして具現化する
このように伝えたい情報を、伝えたい相手に、正確に伝えることで、「一緒に取り組もう!」という相互意識が生まれます。
進行するビジネスマッチングのコーディネート事例
既に、ビジネスマッチングによる最先端農業推進プロジェクト事例が、いくつもあります。
例えば、同機構コーディネーターで農学博士の加藤公彦さんが進める事業は、「高機能性ケールの安定生産技術の確立」「海外展開に向けた機能性ケールの次世代高品質種子の開発」です。種苗メーカーと、ものづくりメーカー、行政(研究機関)の3つの事業者が協同することにより、農業の機能成分を向上させるだけでなく、海外展開に向けたマーケティングも同時に行います。これまでに幅広い農業研究を行っていきた加藤コーディネーターならではのサポートが活かされた事業といえます。
加藤コーディネーターが手がける事業について紹介
また、コーディネーターで中小企業診断士の内藤正英さんが進める事業は、「静岡産オリーブの抽出エキス等を用いたアンチエージング効果のある化粧品や食品の開発」です。農業法人、サプリメント製造メーカー、化粧品メーカー、大学が共同で取り組んでいます。内藤コーディネーターは「まずは、強み・弱み・外部環境を客観的に分析し、把握することが大切」と説明し、ビジネスを客観視する鋭い目線で事業を進めています。
内藤コーディネーターはビジネスマッチングについて紹介
今年より、コーディネーターに加わった上原寿茂さんは、これまで化学メーカーでの開発や研究、新規技術の事業化などに携わってきました。「利益を出し続ける仕組みつくりが、事業を継続するために必要」といいます。今後、農業にサイエンスの視点を取り入れた、新しい事業マッチングにも期待が寄せられます。
上原コーディネーター
実習を通し客観視することで自社の強みを再発見する
後半は、「FCP展示会・商談会シート」を用いた、ビジネスマッチング演習が行われました。
まず、FCP活用例として、JAなんすん様の「ぬまっちゃ『ラブライブ!サンシャイン!!』オリジナルデザイン缶」と「するがの極」が紹介されました。
「ぬまっちゃ『ラブライブ!サンシャイン!!』オリジナルデザイン缶」は、沼津産茶葉を100%使用し、すっきりとした飲み口が特徴の「ぬまっちゃ」を、特別にアニメとコラボレーションしたデザイン缶です。沼津市の各所がアニメの舞台となっており、“聖地めぐり”の観光客に大人気となっているため、ホテル旅館・レストラン・観光施設等から注文が多く、ターゲットが明確です。
また「するがの極」は、JAなんすんで定めた基準をクリアした一等米を厳選する等、品質や味の特徴の説明はもちろんのこと、パッケージデザイン・題字の製作を地元県立高校と行うなど地域に密着した取り組みも特徴となっています。誰が見ても、商品の特徴がわかりやすいことが大切です。
講習で利用した「ぬまっちゃ『ラブライブ!サンシャイン!!』オリジナルデザイン缶」と「するがの極」のFCPシート
これらを参考に、参加者様には「自社商品」のアピール演習として、FCPシートの簡略版を用意し、そちらに記入いただきました。作成には、先に説明した4つのポイントが大切です。改めて自社商品を客観的に考え、文面化することに、戸惑いを隠せない参加者様も多い様子でしたが、コーディネーターのサポートにより記入を進めて行きました。
また、記入後は、複数人にFCPシート簡略版を用いてご発表いただきました。
参加者とコーディネーターのコメント
次に、ミラクルフルーツの生産者からは、品種のもつ特異性と可能性についてアピールがされました。対して、加藤コーディネーターからは保存方法や、特異性を有効活用した機能性の研究を行うことで、ミラクルフルーツの加工品や、機能性を売りにした新たなビジネスチャンスがあるとの意見がありました。
柑橘の生産者からは、一口で食べられるサイズのみかんを「一口みかん」として販売しており、その気軽さから、デザートとしての展開や、栽培における糖度管理などのアピールがありました。上原コーディネーターからは、商品に対する特徴や優位性への質問がされ、大きな可能性があることを感じさせました。その他、糖度保証や表示方法など、消費者のニーズに対応する必要性などがアドバイスされました。
発表の模様
発表の模様
農業経営における問題や、抱える課題はそれぞれ違います。しかし問題点を客観的に、そして具体的に捉えることで、将来的な打開策は必ず見つかります。
「自身の“強み”と“弱み”を把握し、“内に秘める熱いものをアピールすること!”。そうすれば、必ずチャンスはやってきます。課題や悩みは、AOIフォーラムがサポートします。地域の皆さんと一緒に取り組んでいきましょう!」と、AOI機構プロデューサーで進行役の吉田新吾さんは締めくくりました。