第14回しずぎん@gricom(アグリコム)×AOI-PARCで新しい価値と創造を

「農・食・健」の連携による ビジネスマッチングを目指す

written by 小高 朋子

2018.07.24

2018年7月3日(火)に、農業生産者や農産物加工業者の成長支援を目的とした食の商談会「第14回しずぎん@gricom(アグリコム)」が、株式会社静岡銀行さまの主催で開催されました。県内の事業者26社が出展し、静岡県の食材に関心のある首都圏などのバイヤー10社との商談会が行われました。また、あわせて開催された特別講演の内容をレポートします。

「食・農・健」を健康寿命から考える

最先端技術を農業分野に応用し、静岡から「世界の人々の健康寿命の延伸と幸せの増深」に貢献するAOIプロジェクトの意向のもと、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科小熊祐子准教授より「食と健康ウェルビーイング向上のための今後の可能性」についてご講演いただきました。

慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科小熊祐子准教授

日本の人口は減少し、国際的にも他国に例をみない急速な高齢化を経験しています。そこで問題となるのは、平均寿命と健康寿命の差です。介護が必要となる要因の3割は生活習慣病、5割が認知症や高齢による衰弱、関節疾患、骨折・転倒です。すこやかで心豊かに生活できる活力のある社会の実現には、「生活の質の向上」と「社会環境の質の向上」の両立が求められます。そのためにも「栄養・食生活の向上は必要不可欠であり、食に対する理解を深めていくことが大切である」と小熊准教授は説明します。

また、日本人の食事摂取基準の目標量と現在の摂取量に差が見られるものに、食物繊維、ナトリウム、カリウムがあると示しました。エネルギーを生産する栄養素の摂取量とバランスを維持しつつ、食物繊維とカリウムの摂取量を増やし、ナトリウムの摂取量を減らすことが当面の課題であると言います。これらにみる栄養調査結果に基づく数値は、農や食の研究開発をビジネス展開するために必要な知識となるでしょう。さらに、質のよい食と適度な運動の重要性や、イギリスにおける減塩政策の成功例などについても語られました。

「健康寿命」の延伸のために

介護を必要とせず自立した生活ができる生存期間である「健康寿命」の延伸には、内臓の問題「メタボリックシンドローム(メタボ)」と、足腰の問題「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」、心の問題とする「ニューロ」のいずれもが重要となります。これらの問題は「農・食・健」に関わる多様なステークホルダーが連携することで、より大きな効果を実現することができると期待が語られました

静岡県産食材の魅力がアピールされた商談会

出展事業者は各ブースにて自社商品をアピール、個別商談会では活発な意見交換が行われました。今回は、その一部の出展者のうちAOIフォーラムの会員さまをご紹介します。

カネ松製茶株式会社様

創業113年のカネ松製茶株式会社は、県内産地お茶を取り扱う緑茶の製造・販売業として、お客さまのニーズにあわせたオリジナル商品の製造も行っています。例えばアル・ケッチャーノの奥田政行シェフとの共同開発である「あるけっ茶」は、日本酒の最高吟醸製法技術を生かした独自の特許製法により、健康要素であるポリフェノールを含んでいるそう。また、人気商品の一つ「レモン緑茶」は、香料を使用せず牧之原市で栽培するレモンマートルの天然成分により豊かなフレーバーを実現。「急須がないご家庭でもお茶の美味しさを気軽に楽しんでいただけるよう、ティーパックやギフトセットなどにも力を入れています。県外はもちろん、県内の方にも多く飲んでいただきたい」と営業兼商品開発チームの河村新也さん。

うなぎいも協同組合様

ゆるキャラ「うなも」が目を惹くうなぎいも協同組合では、浜松名産のうなぎの残渣である骨や頭を堆肥化しサツマイモを栽培。「うなぎいも」として、ブランド化に取り組んでいます。そこには、増え続ける耕作放棄地の解消と地域活性化への願いが込められていました。地元企業とのコラボレーションにより、プリンやタルトなど様々な商品を製造、販売。加工品を積極的に開発することで、販路を台湾やシンガポールにも拡大し好評を得ています。「今後は、うなぎを使用した堆肥栽培による栄養面や機能性の評価などをエビデンスとして示していきたい」と理事長の伊藤拓馬さん。

株式会社田丸屋本店様

わさび漬の歴史とともに歩んできた株式会社田丸屋本店では「静岡本わさび瑞葵」「静岡ザク切り本わさび」などを紹介。輸入物のわさびを用いることも少なくありませんが、同社では主原料に静岡県産わさびのみを使用。着色料や香料も一切使用せず、わさび本来の風味がしっかりと味わえます。また、静岡産オリーブオイルを製造・販売する株式会社CREA FARM(同商談会出展企業)とコラボレーションした「わさびとしらすの食べるオリーブオイルUMMAMI OIL」なども手がけています。「一緒に商品開発をすることで、田丸屋だけでは実現できない新しい発想や、今までにない客層にアプローチができたら嬉しい」と営業部営業課長の水野政仁さん。

MatchaOrganicJapan株式会社様

川根町で茶農家の若手後継者5人が起業したMatchaOrganicJapan株式会社では、有機栽培した抹茶の輸出に取り組んでいます。16年ごろから耕作放棄地などを借り受けるなどして生産を開始。国内では急須で入れるお茶の需要は減少傾向にありますが、海外向けの抹茶の需要は高まっています。また、お菓子などの加工品に使用されることから女性からの要望も多いそう。地域の子供たちや両親と一緒に、お茶の苗植えをするなどのイベントも行っています。将来的には地域の雇用を支えたいとの考えもあると言います。「お茶の栽培技術には経験と勘に頼らざるを得ない部分が多くあります。今後は、データを用いた農業生産管理システムを整えていきたい」と、取締役農場担当・調整役の増田圭司さん。

株式会社しあわせ野菜畑様

少量多品目のオーガニック野菜の栽培と直売を行う株式会社しあわせ野菜畑では、年間50品目ほどの野菜を露地栽培で、農薬や除草剤、化学肥料を使用しない有機農法を行なっています。2箇所ある農地は、周囲からの農薬飛散の影響を受けない場所を選んだそうです。コンセプトは、“お届けするのは「生きる力」伝えたいのは「野菜の物語」”。お客さまには、エネルギーが詰まったおいしい野菜を直送し、同封される「しあわせ野菜しんぶん」で想いを伝えています。国内だけでなく、香港への出荷もスタート。もともと農業高校の教員だったという代表の大角昌巳さんは「自らが農業の可能性を示し、卒業生も雇用できるようにしていきたい。また、有機農法が安全や安心だけでなく、味の違いや機能性においても優れていることを数値として証明していきたい」と語りました。

商談会まとめ

他多数の出展者たちが魅力的な商品を紹介していました。この商談会を通じて実商売に繋げて行くことはもちろん、新しいプロジェクトや商品の付加価値をより一層高められていくことが期待されます。

 

Let's join us

AOI
フォーラムに
参加しませんか?

AOIフォーラムは、先端技術を農業分野に応用し、静岡から「世界の人々の健康寿命の延伸と幸せの増深」に貢献するための会員制のフォーラムです。AOIフォーラムへの入会に興味のある方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。

フォーラム会員との交流やイベントへの参加を通じて、農業業界のトレンドの情報収集ができます。

フォーラムでの活動やWebサイトを通じて、協業を求めている事業者や、自社事業に活用可能な研究と出会えます。

コーディネーターとの相談を通じて、事業計画作成サポートや補助金情報など、プロジェクト立ち上げの支援を受けられます。